奪うなら心を全部受け止めて
「先輩…俺…謝らないといけないこと、大変な事してしまいました」
誰も居ない3年の教室に居た。
「…どうした」
「……あの、俺、昨日…収拾の為とはいえ、佳織ちゃんにキス…してしまいました」
収拾の為…。
「…」
「あの!言い訳させてください。佳織ちゃんが大変だったんです。3年の」
「千景、知ってる…。聞いてる。佳織から聞いてる。…仕方なかったんだろ?その場を収めるには。聞いた話の状況じゃ、千景のした事、ベストな対応だと思う。…納得して、もうしないって、約束させたんだろ?」
ベストな対応…。
「でも、…した事の事実は…取り消し出来ませんから、…すいませんでした。本当にすいませんでした」
「…いいんだ。…良くはないけど、いいんだ。…有難う、助けてくれて。佳織も怒らないで欲しいって必死に言ってた…助ける為にした事だからって。でも。
…ヤキモチは妬いてる。爆発しそうなくらい、嫉妬してる」
ぐっ…。
「すみません」
「千景…。人を好きになった事あるだろ?
…こんな感情…改めて言わなくても解ると思うけど、…誰にも、触れさせたくないと…男なら思うだろ?」
「……はい。思います。…絶対、嫌です」
「…うん。所有物ではないけど、佳織は…俺のモノだと思ってる。…冷静に言うのもなんだけど、始まったばかりの頃って、好きって気持ちが半端ないだろ?」
「…はい」
「だから、冗談抜きで千景に嫉妬してる。…目茶苦茶、嫉妬してる。…佳織と仲よさ気に帰って行く姿も…自然と手を繋いでる仕草も…楽しそうに笑い合ってる顔も…。何もかもに嫉妬する」
………。
「…でも、仕方ないんだ。俺が頼んだ事だ。
“振り"をしてくれと」