それが伝え方なのです
うへへ、と内心人には聞かせられないような声でにやけてしまう。この顔も絶対人には見せられない。
「ここって矢城の彼氏のバイト先なのか?」
「え?うん。言ってなかったっけ?」
「聞いてない…っていうかなんでオレの周りってこう鈍感なやつ多いわけ……」
どこか決まり悪げでげんなりとした顔になる水無瀬くんにキョトンとなるわたし。何か悪いことでもあったのかな。
考えても分からないのでそれは早々に放棄するとして。せっかく店員さんがいるんだし聞いちゃおうっと。
「あの、静くんって今日は料理の方なんですか?」
「あいつ?今日はどっちもかな。1人急用で来れなくなって兼任してるんだよ」
そっか、さっきはキッチンにいたからいなかったんだ。ということはこっちにも出てくるのかな。まだバイト中っていうのは理解してるけど早く会いたいな。
「矢城、今さらだけどオレとこんなとこ来てよかったのか?」
「? 別に大丈夫だよ?」
むしろダメな理由が分からないんだけど、と首を傾げるわたしに店員さんは苦笑して水無瀬くんも大きなため息をこぼす。
そのとき「オレはどうなっても知らないからな」と呟いていたけど意味がわからなくてますますわたしは首を傾げた。