それが伝え方なのです
◇腹、背中
少し歩調を速めて自宅に向かう。チラリ、腕時計で時間を確認するともう6時前になっていた。
(もう少し早く帰れる予定だったんだけど…)
予想外なことに大学の教授に捕まってしまいだいぶ遅くなってしまった。『今日は静くんの家に行くね!』とやよから連絡もらってたのに。
やよはまだ部屋にいるだろうかと考えながら自分の部屋の扉を開けた。
玄関に見慣れた靴があってほっとすると同時にこんな時間まで待たせてしまったことに申し訳ない気持ちが湧く。
「やよ?」
リビングに続く扉を開けて名前を呼ぶけど返事がない。
靴は玄関にあったのにと考えて部屋を見渡すと、ソファの背もたれの向こうからちょこんと出ている髪の毛。
そっと回り込んでみて自然と頰が緩む。そこには目を閉じて穏やかな表情で眠っているやよの姿があった。