アナタがここにいる、それだけで・・・・・・【ぎじプリ】
ありがとう
ひくっ。
止めどなく溢れる涙が伝う頬を、そっと大きな親指が拭う。
その温かさに、また、一筋の雫が落ちて。
「来ちゃダメだって、言っただろ?」
「でも・・・・・・」
ここに来ればアナタに会えるから。
自分でも逃げてるって、わかってる。
だから、ほんの一時(ひととき)だけでいいの。
傍にいさせて。
「しかたないな」
苦笑いで広い肩を竦めて。
でもアナタはわたしを受け入れてくれる。
彼の長い腕が私を抱き寄せ、私はすっぽりと包みこむ逞しい胸に顔を埋めた。
喩えようのない安心感。
守られているという充足感に、ふるりと身が震える。
乱れた私の髪を、彼が長い指で丁寧に梳る。
「今日はどうした?オレでよければ、聴くだけならしてやる」
耳元で囁かれる呟きに、わたしはいつも甘えてしまう。
「あのね」
涙で潤んだ視線を上げれば、優しく微笑む暗灰色の瞳にぶつかる。
そこに映る自分の泣き顔が、あまりにも不細工で。
思わず背けた顔の涙跡の残る頬に、彼の手が添えられた。
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