アナタがここにいる、それだけで・・・・・・【ぎじプリ】
不安げに振り返ったわたしに、頷き返す。
「さあ、仕事に戻らないと。
美味しい茶でも淹れてやれば、彼女の気持ちも、少しは和らぐだろう」
痛みの混じる声音に、青木さんもまた、わたしのように彼の元へ来ていたことがあるのだろうと悟った。
人知れず、辛い恋に泣いていたのかもしれない。
そう思うと、ほんの少しだけ気の毒に思う反面、それを彼が優しく慰めていたのかと想像すると、なんだかモヤモヤとしたものが胸の内に渦を巻く。
「また、ここへ来てもいい?」
「サボりと、本来の目的でないなら、いつでも」
低く落ち着いた声が、頼もしく反響する。
「ありがとう」
わたしは必要最小限に落とされた照明の、薄暗い空間へと手を振った。
『その時』なんてこない方がいいけれど、もしきたとしてもアナタがいればきっと大丈夫だって信じている。
アナタがここにいつでもいてくれるから、わたしは、わたしたちは安心していられるの。
ずっとアナタはここにいて、助けてくれることを知っているから――
―― 完 ――
2015/12/03
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ぎじプリ 【 避難階段 】
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