完璧上司の秘密を知ってしまった件について
…間もなくして、隣の先輩は、須藤課長と共に取引先に向かい、凛はようやく息が吸えた気がした。

(仕事、集中、集中…)

呪文のように唱えながら、仕事を始めた。今日やっとまともに仕事が出来た。

…とはいえ、遅れを取り戻すのは至難の技。結局、今日も残業だ。

《今晩、メシ行かない?》

途中、新からLINEが来たが。

《ゴメン、残業》

と返した。…行きたかった。

(須藤課長は、疫病神だ。そうだ!)

「…この、疫病神‼︎」

誰もいないのをいい事に、そう言って、ちょっとスッキリ。

「…誰が、疫病神だって?」
「…」

本当に疫病神だ。須藤課長が外回りから直帰の筈だったのに、オフィスに戻ってきた。

凛は、苦笑いで首を振ると、また仕事を始めた。黙々と。

…午後9時。

「お、わったー」

思わず凛は背伸びした…が、そのままの体勢で固まった。

凛を睨見つつ、見下ろしてる人物が1人。

「…付き合ってもらおうか?」
「…ぇ…あ、帰らないと」

「ほー、上司の誘いを断ると?」
「お母さんがご飯の用意してくれてるので」

つい、本当の事を。ここで言うなら、先約が、の方が逃げやすいのに。

「…上司の誘いを受けたと断れ」

…凛の目は、須藤課長の絆創膏に。…わざとじゃないとはいえ、それは流石に、自分が悪いという罪悪感…後、須藤課長の圧力に、負けた。
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