完璧上司の秘密を知ってしまった件について
「凛ちゃんかぁ、うん、君にピッタリ」

(そんな事言われたのは初めてだ)

と思いながら、須藤課長の横にチョコンと座った。

「…凛ちゃん初めて来てくれたから、これはサービスね」

そう言って差し出されたのは、ピンク色のカクテル。

「そんなにアルコールはきつくないから、飲みやすいよ」
「…ありがとうございます…ぁ、名前」

語尾は小さかったが、流石は接客業と言うべきが、バーテンダーはニコリと笑って。

「…遼(りょう)だよ。覚えてね」
「…女に愛想振りまいてると、そのうち刺されるぞ」

「…」

遼の営業スマイルに、又しても毒を吐いた須藤課長だったが、遼は全く気にしていない様子。

…さっきから毒しか吐かない須藤課長に、流石に凛も腹が立ち。

「この人、いつもこんな感じなんですか?毒ばっかり吐いて!裏表あり過ぎ!」

…と、カクテルをグイッと流し込む。
(…ぁ、マズイ)

と、思った時、チラッと横を見ると、やっぱり睨まれている。

凛の言葉にクスクスと笑う遼。
(笑い事じゃない!)

と思いながら、又カクテルを飲んで誤魔化した。

「…人に怪我させた奴がよく言う」
と、ビールを飲んで一言言った。

「あの時は本当にすみませんでした。…でも、突然呼び止めるから…手当もままならなくて」

ションボリしながら呟く凛。

「人のワイシャツに口紅はつけるし」
「あれは!…あれは、須藤課長が急に引っ張るから!」

反論すると、また睨まれる。

二人のやりとりを、遼は楽しそうに見ている。
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