完璧上司の秘密を知ってしまった件について
「コイツに何か用?」
「…ひ、いえ」

凛は後ろ姿しかみえないが、酔っ払いは、睨みを聞かされ、声が上ずっている。

「…用がないなら、さっさと行け。でないと…」
「ヒーッ‼︎すみませんでした‼︎」

あちこち体をぶつけながら、酔っ払いは退散した。

「…すみません、助かりました」

救世主の背中に向かってお礼を言う凛。その声に振り返った救世主の顔を見て、凛は一気に力が抜けて、グスグスの鼻をすすりながら泣き出した。

「…大丈夫か?」
「…大丈夫、じゃ、ない」

「なんかされたのか?」
「手首が、ヒック、痛い」

そう言うと手を持ち上げた凛。その手首は真っ赤になっていた。

「…」

顔を歪めた救世主は、凛を抱き寄せた。

「…新〜!」

…凛の救世主は新だった。

「怖かったな…とりあえず、その手首を冷やさないと」

背中をトントンとした新は、すぐ近くにある公園に凛を連れて行き、ハンカチを濡らすと、赤くなった手首を冷やした。

**********

取引先から帰ってきた須藤課長は、一度会社に戻るところだった。

早足で歩いていると、通行人達が、駅の改札口の方向を見ながら通り過ぎる。

何事かと、目を向けた須藤課長もそちらに視線を向けた。

…目の前の光景に思わず足を止めた。



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