完璧上司の秘密を知ってしまった件について
「なっ、なにすんのよ」
「何って、手を握ったんだけど」

薄暗い部屋の中、焦る凛に対し、新は至って冷静にそう告げた。

「離しなさいよ!」
「やだね」

「子供みたいな事言わないで」
「ぜってー、離さねえ」

「新!」
「…落ち着くだろ?」
「…」

新の言葉に、凛は黙った。

「さっきの事が、頭から離れなくて眠れないだろ?」
「…なんで」

(わかっちゃうのかなぁ)

凛は溜息をついた。

「こうしててやるから、寝ろ」
「…今日は、助けられっぱなしだね」

「…凛だって女なんだから、弱った時は甘えてればいいんだよ」

(…さっきは女だった?とか言ったくせに)

と思った凛だが、あえて言わなかった。…女の子扱いされるのは、悪い気はしない。

…新のお陰で、落ち着いてきた凛は、ウトウトとしていた。

「…凛」
「…んー?」

「凛は俺の事好き?」
「…んー、好きだよ…大、好きだよー」

思ってもいない言葉に、新黙り込んでしまった。

「好きじゃなきゃ…傍に、いるわけないー…」

「…凛?」
「…」

新が凛を呼んだが、凛は眠ってしまった。
新は溜息をついて、フッと笑った。

「…可愛い顔して寝てやがる」

薄暗い部屋の中だが、豆球で少しは凛の寝顔が見えた。

凛の顔にそっと触れた新は、そのまま、眠る凛にキスをした。

…だが、眠ってしまった凛は何も知らない。
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