完璧上司の秘密を知ってしまった件について
凛を睨んだ秋夜は、踵を返し、部屋を出ると、バタンッ!と勢いよくドアを閉めた。

「もぅちょっと、優しくドア閉めてよね」

一人ぼやいて、溜息をついた凛は、ノロノロと身支度してコーヒーだけを飲んで出勤する。

(…っていか、男が泣いちゃダメでしょ?気づかなかった私が悪いけど…私の方が泣きたいよ)

また、凛は溜息をついた。

「あー!鬱陶しい!溜息ばっかついてんじゃねぇよ!」

また頭をはたかれた凛。涙目で秋夜を睨んだ。

「もう!何べんも叩かないでよね!私だって悩んでるんだから!…新はずっと良い友達だったよ?…今更彼氏とか」

涙目のまま、そう言った凛は、俯いてしまった。秋夜は溜息をついて、凛の頭を撫でた。

「新、良いやつじゃねぇか。そう固く考えるなよ。今まで通りでいいと思う。変に意識すると、上手くいかなくなるぞ」

「…須藤課長は?そっちは勧めないんだね」

「…は?…凛、お前圭吾の事好きなのか?」

「…いや、たぶん違う…よくわかんない」

「おまえなぁ…でもまぁ、アイツは勧められないな」
「美雨さんが絡んでるから?」

「…なくはないけど、そうじゃない」
「もったいぶらないでよ」

「…学生時代の時の話だけど、女癖が悪かったって噂があったし、実際、連れてる女は毎回違ったな。今はどうか知らないけど、人の性格なんて、そうそう変わらねぇだろ?そんな男と付き合うくらいなら、新みたいな真っ直ぐな奴の方が、凛は幸せになれると思う…おまえのこと、これでも心配してんだからな」

そう言うと、また凛の頭を撫でた。

「お兄ちゃん…ゴメンね、ありがとう。ちゃんと考えるよ」

凛の言葉に、秋夜は微笑んだ。
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