完璧上司の秘密を知ってしまった件について
「そんなに改まったお礼はいいよ。事務処理は俺ら2人なんだし、大変な時は助け合って当然なんだから」

クスクスと笑いながら言った鈴木に凛は笑顔で言い返した。

「ありがとうございます、鈴木さん」

鈴木に仕事をお願いした凛は、ノートパソコンとカバンを持つと、須藤課長と共に、取引先に向かった。

「…何度もご足労おかけして申し訳ありませんでした」
「いいえ、気になさらないでください。仕事ですから」

取引先担当と2人で話しをしていた凛。須藤課長は、取引先の部長と別室で話しをしていた。

「…それでは、そろそろ」

そう言って立ち上がった凛を、止めた。

「あの!」
「…はい?」

「…これ」
「…」

手渡されたのは、プライベートの携帯番号が書かれた名刺。凛はどうしていいものかわからず固まる。

「…よかったら、今度食事でもど「佐伯さん」

誘いの言葉に言葉を被せたのは。

「…須藤課長」

その顔を見た凛は、ちょっと安心する。

「…前田さんすみません。佐伯は彼氏持ちなので、そう言った事は控えて頂きたい」
「…え」

「彼氏に見張ってろと、言われてます…申し訳ありませんね」

「あ、いえ…こちらこそ」

苦笑いの担当者に、笑顔で会釈した須藤課長は、凛を連れ、会社を出た。
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