足跡に惹かれて
それからすぐに部活も休みに入って、お互いなんだか気まずくて、連絡もとらず、気づいたら年が明けていた。

初詣に近所の神社に行くのが元日の我が家の恒例行事。

いつもはがらんとしていて、誰も見向きもしない神社に

こういう日は都合よく人が集まる。

その中をうろうろして、列の最後尾を見つけた。

マフラーにコート、ブーツ、それから先輩から貰った手袋をつけて、完全防備で出陣している。

並びはじめてすぐに、誰かに肩を叩かれた。

後ろを振り返ると、

「先輩...!」

そこには、マフラーに顔を埋める先輩がいた。

「手袋...」

そう一言だけ言って、手を握ってきた。

完全防備でも寒かったはずなのに、急に体温が上がっていった。

「すごく暖かくて助かってます!」

そう言うと、先輩に手を引かれて並んでいた列を離れて行った。

私は訳が分からず、先輩に連れていかれるがままに身を任せていると、

「親の前、恥ずかしくて...」

そう言って、それでも手はぎゅっと握っていてくれた。

「ふふ、でも、戻ったら確実に突っ込まれますよね。」

そう言うと、先輩のほっぺは急に赤くなった。

それから、

「じゃあさ、彼女として紹介させてよ。」

そう言った。
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