私だけのナイトプリンス
その日の夜、初めて彼からメールが来た。

「今から電話していい?」

わざわざこんなメール入れなくても、直接メールしてくればいいのに。彼の変わった行動にちょっとだけ口角が上がった。

「大丈夫だよ」

そう返信して、彼からの着信を待つ。数分で彼から電話がかかってきた。

「どうだった?」

どうだったってどういうことだろう。ぽかんとしていると、受話器の向こうにもそれが伝わったのか彼が続けた。

「僕今日すごく、美弥さんに見られている気がした。よく目が会ったよね」

どこまで、私注目されてんの?というか、この朗らかな口調は職場と全く違う。だけど、紛れもない彼の声。違和感の山が私に押し寄せる。

「僕に対して思ったこと、感じたこと、全部直接聞きたい。だから、明後日気を遣わない場所で会いたいんだけど」

告白されてから、まだ1日と数時間しか経っていない。さすがに二人で会うのは気が引けた。だけど、彼のことを知るチャンスでもある。付き合う、付き合わない関係なく彼がどんな人間なのか単純に知りたかった。

「1日中拘束されるのじゃないならOK」

「美弥さんの家、会社の近くなんだよね。美弥さんが会社の知り合いに会いたくなければちょっと遠くのほうでもいいけど、交通費かかっちゃうよね」

確かに、知り合いに会ってしまうリスクがあるのはイヤだ。

「知り合いに会わなさそうなところがいい。交通費は多少かかっても大丈夫だから」

彼は、店が決まったらメールすると言い、電話を切った。
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