Mr.ハードボイルド
オフィスに戻り、俺はニーナに声をかけた。
「ニーナ、明日でお犬様のお散歩の仕事も終わりだな!次になんか仕事入ってるか?」
彼女は首を横に振った。
「そうか、特にないのか。まぁいいか、それにしても、我ながら毎朝よく続いたもんだなぁ、エラいだろ、ニーナ?」
「トミー、仕事なんだから当たり前よ、と言いたいところだけど、禁キャバまでして頑張ったのは、正直見直したわ」
そうかい、そうかい。
まぁ、禁キャバするくらい価値のあるものが待っていたからね。
ねっ?祐希ちゃん!
ちょっと、ニーナには後ろめたいが、これは男のサガだ!
許せ、ニーナ。
「で、ニーナ、頑張ったご褒美に今夜はキャバ遊び行っていい?」
その俺の問いに彼女はタバコに火を点けながら答えた。
「だ~め!まぁ、私も飲みに連れて行ってくれるならいいけど。ホストクラブとかね!」
「おい、俺がホストクラブ行ってもしゃあないだろ」
「私だってキャバクラなんか行きたくないわよ!」
まぁ、そりゃそうだろうが。
ちょっとはニーナにも感謝してるし。
「じゃあ、間とってオカマバーでも行きましょうか?」
ニーナの提案に俺は吹き出した。
「ニーナ、オマエ、面白いヤツだな!」
「なによ、今更知ったの?」
「たまにゃあ、そんなオマエと楽しく酒でも飲むのも悪くねぇなぁ!」
そんなニーナに俺は、挽きたてのモカの豆からドリップさせた濃いコーヒーを1杯入れてやった。