Mr.ハードボイルド
「それじゃあ、ニーナ、今から久しぶりにデートとしゃれこむかぁ?」
俺はそう言ってタバコに火を点けた。
「フン、いいわよ。そのかわり、ちゃんとエスコートしてよね。私はお金のかかる女だからね。そのことは、お忘れなく」
彼女はコーヒーカップをデスクに置いて上目づかいに微笑んだ。
俺はその仕草にドキッとした。
コイツ、たまにエラく色っぽい表情しやがるんだよなぁ。
男のツボを押さえてやがるぜ、マッタク。
これで、性格も素直なら、いうことのない女なんだが。
とりあえず、俺とニーナは連れだって街にでた。
まだ飲みに行くには時間もあるし、俺達は話題の恋愛映画を観て感動してみたり、デパートの玩具売り場にいって子供時代を懐かしんだりしながら時間をつぶした。
時折、彼女のみせる、笑顔や涙に、俺はなんだか、言いようのない新鮮さを感じた。
まぁ、なんやかんやいっても、27歳の普通の女の子なんだなぁ、コイツもさ。
「ね~え、トミー、なんだかお腹すいちゃった」
「あ?んじゃ、そろそろ飯にすっか」
そう言って、俺はニーナの腕をとって、昼に予約を入れておいた鉄板焼き屋へ向かった。