Mr.ハードボイルド
なんだか、聞き覚えがあるような気がするのだが。
デジャヴ………か?
俺はゆっくりと後ろを振り返った。
!!!!
ゆ、祐希ちゃん?
ど、どうしてここにいるの?
「あっ!富井さん!」
そう言って、彼女は満面の笑みを浮かべながら、勢いよく俺の胸飛び込んできた。
俺の体に触れる祐希ちゃんの体は、柔らかくて、女の体そのものだったんだけど。
「富井さん、また明日の朝も武蔵と一緒にあの公園で待ってますね」
彼女(男なの?ホントに男なの?祐希ちゃん……)は、嬉しそうな瞳で俺を見つめて言った。
俺は口をパクパクさせながら力なく頷いた。
「なんだぁ、トミーちゃんと祐希ちゃん知り合いだったの?」
ダミ声のローズママさんが驚いたように言った。
「じゃあ、話が早いわ。トミーちゃん、1本ボトルサービスしてあげるから、毎日来てね」
「なるほどねぇ、アンタにすりゃ、キチンと仕事してるから怪しいとは思ってたけど、そんな理由があったとは、ホント、呆れちゃうわ」
帰り道でニーナはネチネチとイヤミで俺を責め続けた。
「ごめんよ、ニーナ、もう浮気しないから、そんなに責めないでくれよぅ」
「別に私はアンタの恋人でもなんでもないんだから、浮気でもなんでもないんじゃない?勝手に男女問わず、恋人さがししたら?」
ホント、こういう時のニーナは強い。
真性のSだな、コイツ。
「まあ、今回はアンタも、一応はキチンと仕事したし、それに今夜は奢ってもらったし、しょうがない、これから私が誠心誠意アンタのこと慰めてあげようか?」
そう言って、彼女はその細い腕を俺の手に絡めてきた。