Mr.ハードボイルド
俺は隣で寝ているニーナを起こさないように、そっと、ベッドを抜け出た。
昨夜の深酒で頭が割れそうに痛い。
エリザベートのお散歩の契約も今日までだ。
こんな頭痛、我慢しないとな。
三枝夫人に契約の延長の意志が無いのを確認して、俺はエリザベートお嬢様と最後のデートに出掛けた。
なんでも、三枝夫人の海外にいた息子夫婦が帰国し、明日から一緒にここで生活を始めるとのことだ。
息子夫婦と孫にがいりゃあ、誰かしらがエリザベートの世話をできるとのことだ。
まぁ、そりゃ、いいこったが。
実は俺はちょっとだけだが、寂しい気もする。
あくまでも、ちょっとだけだかな。
まぁ、なんつうか、つまりエリザベートお嬢様が、なんだ、かわいく思えてしまってな。
彼女も俺になついてくれてたしな。
それに、お互いタマタマをとっちゃった元男性に心を乱されてしまった者同士だしな。
いつもの公園に着いた。
ブランコに腰を下ろした祐希ちゃんの膝の上に、武蔵くんがお行儀よくちょこんとお座りしている。
ふたりは俺達に気付いた。
彼女は顔に笑みをたたえながら、こちらに走り寄ってきた。