Mr.ハードボイルド
彼女からの依頼
俺の名はトミー
しがない、なんでも屋さ。
店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。
それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。
おっと、相棒のニーナがやってきた。
今日も相変わらずイイ女だぜ。
「おはよう、トミー」
甘い香水の香りを漂わせながら彼女は言った。
「あぁ、おはよう、ニーナ」
俺は淹れたてのモカを飲みながら彼女に答えた。
彼女との出会いはかれこれ3年前になる。
当時の俺は、しがないサラリーマンだった。
たまたま、取引先の接待に使ったキャバクラで俺は彼女と出会った。
一目、彼女を見て、当時の俺はすっかりのぼせ上がってしまった。
特に、彼女の凛とした強い意志を感じさせる知性的な瞳に、俺はすっかり骨抜きにされた。
彼女は、今と同様、物事をハッキリ言ってしまうのが災いしてかその美貌の割には人気嬢ではなかった。
ひとことで言えば、営業下手だった。
だが、俺はすっかり彼女に入れ込んでしまい、そこから1年間、食費を切り詰めながらも、彼女のもとへ通った。
そうこうしているうちに、俺の人生を変えるような劇的な事件が起こり、俺はサラリーマンをやめて、ニーナと共にこの『オフィスHBサービス』を開業した。
「トミー、相談があるんだけど、聞いてくれる?」
彼女にしては珍しく低姿勢で、俺に話しかけてきた。