Mr.ハードボイルド
「まぁ、店から叩き出されたんだからクビなんだろうな」
俺の答えにニーナは更にその目をつり上げた。
「店の用心棒が店の女の子に手を出してどうするのよ!この、ボケっ!」
「なんだぁ?ニーナ、オマエ、妬いてるのか?かわいい女だな」
俺の言葉に逆上したかのように、彼女は俺の額に灰皿を投げつけやがった。
マイったぜ、目の前がチカチカしてやがる。
決して、よい子は真似しちゃいけないぜ。
「誰が妬くかっての!それより、お金はもらえたの?」
「金?もらえるわけないじゃんか。まぁ、そのぶん、ミチルちゃんから、いい思い出をたっぷりもらったからいいだろ?そうカリカリすんなって」
ニーナはワナワナ震えながら、俺の机を蹴り上げた。
その時、彼女の丈の短いスカートの奥に、一瞬だが黒いレースの下着が見えた。
いや、さすが、大人の女だねぇ。
「やい、富井俊介、もう我慢の限界だ!こんなオフィス辞めてやる!アンタみたいなバカな男とこれ以上、仕事はできないわ!」
あらら、またでたよ。
いつもの捨て台詞。
そんなにイライラしちゃって、更年期障害か?まぁ、こんな時はいつもの得意技の……
平身低頭平謝りで……
「ごめんなさい。新名朋美さん!これからは、心を入れ替えて仕事しますから、見捨てないでください」
俺の必殺技、平身低頭平謝りが炸裂しているところで、オフィスの電話が鳴り響いた。