Mr.ハードボイルド
ニーナは朝も5時前から、山内豆腐店に行って豆腐作りを手伝っているようだった。
そして9時過ぎに豆腐を2丁持ってこのオフィスに姿をみせる。
「ハイ、トミー、これ今日の差し入れ」
結局、朝飯に俺は毎朝豆腐を食う羽目になった。
豆腐と入れたてのモカ、組み合わせは微妙かもな。
緑茶なんだろうな、ホントは。
ニーナの出社と入れ替わりで、俺は豆腐売りに出掛ける。
ここんところ、昔はさぞかし美人だったろうと思われるマダムたちにモテモテ状態だ。
豆腐を届けると、必ずといっていいほど、お茶だの和菓子だのを、勧められる。
まぁ、ひとり暮らしの老人にとっちゃ、こうやって定期的に訪れる俺なんかは、イイ話し相手になるんだろうな。
多分、山内豆腐店のダンナもこうやって地域密着型の営業方針を理念としていたんだろう。
隣に住んでるヤツの名前も知らないことが多い時代に、なかなかできるもんじゃないよな。
こんな都会の真ん中でも、人と人の触れ合いがあるとはなかなか捨てたもんじゃないな。
まぁ、しょうがねぇや、山内のダンナが復帰するまでは、代わりにこの俺がこの辺の婆さん達の面倒まとめてみてやるよ。
っても、正直、マダム達は少なくとも俺のストライクゾーンじゃないからな、そのことだけは勘違いしないでくれ。