Mr.ハードボイルド


まぁ、なんやかんやと、2年程ニーナとこのオフィスで仕事をしている。
なんでも屋ってだけあってなんでもしているのだが、世の中なかなか面白いもので、どうしようもない事で俺達のもとへ駆け込んでくるヤツは多い。
ひどい時は、ゲーム機やソフトを買うために夜中から店前に列んでくれといったものや、彼氏と別れる為に、新しい男のフリをしながら、万が一暴力沙汰になりそうな時は護ってくれ、なんて依頼もあった。
俺が言うのも変な話だが、金を払ってまでも人に頼むようなことじゃねぇだろと、多々思う時がある。
マッタク、他人(ヒト)の考えてることはよくわからん。


「ねぇ、トミー、来週1週間、休みもらえないかな?」

ニーナが申し訳なさそうに俺に訊いてきた。

「ん?1週間もか?まぁ、今日もこうやって暇してんだから構わねえけど。どうしたんだ?突然」

俺の言葉に彼女は伏し目がちに答えた。

「夕べね、母親から電話があったの。お祖母ちゃんが入院したんだって。私、父親には勘当同然に家を追い出されたけど、母には連絡先も今の生活の事も伝えてあったんだ」

なんか、いつものニーナらしくなく、俺はつい言葉に困ってしまった。

「こっちの事は気にすんなよ。どうせオマエ、ガキの頃、ばあちゃん子だったんだろ?そういう時は何も遠慮しないで帰ってやれよ」

「ありがとう、トミー」

「あぁ、気にすんなよ。その代わりスマホに高性能のGPSアプリ入れといてくれ。なんかあったら、俺がすぐ迎えに行くからさ。じゃ、今日は帰っていいぜ」

ニーナはペコリと頭を下げて、ドアに向かった。

「あっ、ニーナ、オマエんちの実家どこだ?確か群馬県だったか?なら車で送ってやるぞ!どうせ、今日は暇だからな」

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