Mr.ハードボイルド
バックミラーに写るニーナはさらに続けた。
「それでさ、東京に出てきてさ、お水の世界に飛び込んだんだ。その後さ、まだ、トミー、アンタと出会う前のことなんだけど、一応、父親は私のことを捜してたんだよ。まぁ、その理由も、私を自分の後継者と結婚させようってものだったみたいだけどさ。でも、私がキャバクラ勤めなんかしてたものだから激怒しちゃってね、その場で勘当を言い渡されたわ」
鏡の中のニーナはおかしそうにひとり微笑んだ。
「でも、母親とはそれ以来、連絡のやり取りはしてたの。母は自身の味わった人生を私には経験させたくなかったらしくて、私の生きたい様に自由に生きればいいって、言ってくれたの。そして、しばらくして、アンタに出会って、今に至るってワケ」
「そうか、結構、波乱万丈な人生送ってんだな、ニーナ。それで、俺と出会ってからの人生はどうだ?自分で言うのもアレだか、満更悪くないだろ?」
俺の問いに彼女はマジメな顔で答えた。
「いんや、後悔しまくってるのよ!アンタじゃなくて、別の男の誘いに乗りゃよかったって!」
なんだぁ?そりゃ?
「ウッソだよ~!」
そう言ってニーナは、ケラケラ笑い始めた。
俺は彼女を富岡市の彼女の実家まで送り届けた。
そして、GPSアプリのことを話し、
「とりあえずおまえの居場所わかるようにしといてくれ。なんかあればさ、俺がすぐに迎えに来てやっから」
そう言って俺は彼女を残して東京に向かった。