Mr.ハードボイルド
彼女の心を奪え!
「はい、オフィスHBサービスです」
さっきの俺への罵声とは打って変わり、新名さんはよそ行きの声で電話対応していた。
まったく、女ってのはわからんね。
電話みたいに相手の顔が見えない状況でも、自分を美しくみせようとしやがる。
まぁ、そういうの、俺は嫌いじゃないけどな。
「トミー、仕事入ったわよ。アンタに断る権利は無いわよ。さぁ、これ、依頼人の住所。さっさと今から行ってきて」
再び、ニーナは厳しい口調で俺に言ってきた。
「依頼内容はなんだ?」
「モテモテのトミーさんには、うってつけの仕事よ」
幾分、笑みを浮かべながらニーナは言った。
「とある、資産家のご令嬢様と毎朝のお散歩よ。なんでも、家の人にしか心を開かないお嬢さんらしくてね、アンタにしっかり面倒みてほしいってさ」
「あぁ?ガキのお守りか?なんでこの俺がそんなこと」
俺の言葉を遮ってニーナは言った。
「アンタ、仕事選べる立場じゃないでしょっ!とりあえず1ヶ月間、毎朝7時から9時で12万、交通費、必要経費別途支給の条件だからしっかりやるのよっ!」
ほぅ、優秀な相棒だこと。
確かに条件は悪くないが。
「なぁ、ニーナ、ついでに朝飯支給の条件つけてくれないか?もちろん、トースト、コーヒー、ゆでたまごの3点セットで」