Mr.ハードボイルド
祐希ちゃんとローズママに挟まれながら、バーボンのロックをカポカポと飲んでいたところへ、ニーナからの電話がかかってきた。
『もしもし、トミー?』
「あぁ、ニーナ、どうだおばあさんの具合は?」
『案外大丈夫だった。ありがとう、トミー。そっちは大丈夫?』
「あぁ、こっちはなんも問題ない。今、ローズママのとこで飲んでるところだ」
『まぁ、さっそく遊び歩いてんの!』
電話の向こうの彼女の表情が容易に想像がつき、俺は吹き出しそうになった。
「ニーナ、そんな目くじらたてんなって、たまにゃあ、鬼のいぬ間のなんたらってやつだ。まぁ、オマエはゆっくりとばあちゃん孝行してきてやれ。こっちの心配は無用だぜ」
携帯の向こうから彼女のクスクス笑う声が聞こえた。
『わたしゃ、鬼か!』
電話を切った俺に、祐希ちゃんが訊いてきた。
「富井さん、ニーナさんて富井さんの恋人なの?」
「いや、ただの仕事のパートナーだ」
そこにローズママのダミ声が割り込んできた。
「あらぁ?そんことはないんじゃない?私の目から見れば、アナタ達、少なくとも男女の関係ではあるわね。長年客商売してる私の目はごまかせないわよ」
あらら、このオッサンなかなか手強いかも。
「え、それ、本当なの?富井さん」
祐希ちゃんは、今にも泣き出しそうな顔で俺を見つめた。