Mr.ハードボイルド
「よぉ、ニーナ」
俺は庭園に出てきた彼女に声をかけた。
「と、トミー?」
ニーナは文字通り目を丸くして驚いた。
「やっぱり美人にゃ和服も似合うな。相変わらずイイ女だぜ」
「ちょ、ちょっと、トミー、いったいココでなにしてるの?」
「『なにしてるの?』たぁ、ご挨拶だな、わかるだろ?ニーナ、オマエを連れ戻しにきた。オマエの居場所はこの俺の隣しかねぇからな、そんなん、聞くまでもねぇだろ?」
彼女は泣き出しそうな表情だったが口元をほころばせて呟いた。
「…………ばか」
俺たちのそんなやり取りを見て、ニーナの隣にいた七三が食いついてきた。
「な、なんなんだ、君は!」
声が裏がえってやがらぁ。
情けねぇ。
「俺かぁ?俺は富井俊介だ。この新名朋美を迎えにきた」
そう言って、ヤツの目の前まで歩み寄ってやった。
「ぼ、僕達はお見合い中なんだぞ!邪魔するな!」
ほぅ、よく吠えやがる。
「見合い中たぁ、おもしろいこというね、アンタ。じゃあ、今回はご縁がなかったってことで諦めてもらえるかな?ボクちゃん?」
そう言って、俺はニーナに向き直して言った。
「さぁ、ニーナ、帰ろうぜ」
彼女は俺の手をとって、コクリと頷いた。