Mr.ハードボイルド
俺はニーナに渡されたメモに従って、依頼人のもとへ訪れた。
ほぅ、立派なお屋敷だねぇ。
表札には『三枝』とだけ書いてある。
その表札の横にモニター付きの呼び鈴があった。
「こんちわ~、オフィスHBサービスの富井と申します」
すると、オートロックの門が解錠された。
俺は門を開け、随分と先にある邸宅の玄関に真っ直ぐ向かった。
途中、目つきの悪い白黒の犬に唸られたが、犬ごときで俺は怯んだりしない。
「こんちわ~、三枝さん」
玄関を開け声をかけると、中から杖をついた御婦人が現れた。
「どうも、なんでも屋さんの方ですね?お上がり下さい」
俺は招かれるまま、おじゃまさせてもらった。
ったぁ、マイったね、すげぇ金持ちの家じゃねぇか!
調度品にしろ何にしろ、ひと目で高級品だってことがわかるぜ、こりゃ。
さて、本題に入らせてもらおう。
「えぇと三枝さん、今回の御依頼の件ですが」
俺が言葉を言い切る前に三枝夫人は話し始めた。
「本当に助かります。私、先日、うちの娘の相手をしてまして、転んでしまいまして、足腰を傷めてしまいましたものでして、こんなことお願いするのはみっともないと存じますが」
あぁ?娘の相手して転んでケガって?
このバアさん、なにやってんだ?