Mr.ハードボイルド
俺たちの騒ぎを聞いてか、庭に面した戸が開いて中からニーナの両親と七三の両親とおぼしき人物がでてきた。
その中のブルドッグみてぇなツラのオヤジが俺に向かって言った。
「なんだ?貴様は」
貴様たぁ、ご挨拶だねぇ。
「僕は富井俊介です。新名朋美さんを迎えにきました」
「なに言っておる!何者だ、貴様」
「だから、富井俊介です。オフィスHBサービス代表です。朋美さんと一緒に働いている者ですよ」
俺はブルドッグ顔の親父の目を見据えて言った。
「会社の同僚が娘になんの用件だ。朋美は今、見合いの最中だ!」
「見合いの最中だから、迎えに来たんですよ。嫁にいかれちゃ困るからね」
「貴様がなぜ困る必要がある?同僚なら祝ってやるのが筋だろうが!」
バカだねぇ、このオッサン。
祝ってやるくらいなら来ないっての!
「朋美さんが必要な人間だから迎えに来たんですよ、俺にとってね」
俺はニーナの手をとって去ろうとした。
すると、背後からブルドッグ親父が走り寄ってきて俺の顔面にパンチを入れやがった。
「お父さん、やめて!」
ニーナの悲痛な声が響きわたった。
「私はこの人と一緒にいたいの!だから私のことなんて前みたいにサッサと忘れて!」