Mr.ハードボイルド
「馬鹿者!朋美、ワシがオマエみたいな者のために、地位も名声もある婿を紹介してるんだぞ!このワシの深い愛情がわからんのか!」
ブルドッグ親父はプルプル震えながら怒鳴りつけた。
「自分に都合いい解釈を押し付けないで、お父さん。仮に私がその人と結婚しても、幸せになんかなれないもん。お父さんは自分の娘婿として都合がいいのかもしれないけど、私の人生は私が決めます!」
さすが、ニーナだ。
芯が強いぜ。
改めて惚れ直したぜ。
「なぁ、オッサン、そういうこった。アンタのいう愛情たぁ、愛じゃねぇんだよ。その点、俺は、朋美を愛してるんだ。ひとりの女としても、またひとりの人間としてもな。だから、悪いが諦めてくれ。そのアンタのいう薄っぺらい愛情ってヤツをさ」
そう言って、俺はニーナを抱きかかえて車に向かった。
彼女はくすぐったそうな笑顔を俺に向けて言った。
「………トミーのばか」