Mr.ハードボイルド
俺は助手席に着物姿のニーナを乗せて、関越道を東京方面に走った。
「トミー、ありがとう」
しおらしく、ニーナのヤツは、はにかみながら俺に言った。
「でも、間に合って良かったぜ。群馬に向かってる時は、慌ててたもんで、この辺で速度違反で捕まっちまったからなぁ」
なんだか、照れくさくなっちまって、俺はそんな話を口にした。
「え?そうなの?免停とか平気なの?」
心配そうに話す彼女に俺は答えた。
「あぁ、問題ねぇ、なんつっても、俺、ゴールド免許だったから」
「でも、次は青に戻っちゃうんじやない?それに罰金も払うんでしょ?」
俺はタバコに火を点けながら答えた。
「そんな心配してくれんなら、罰金25000円を経費で落としていいか?」
よく晴れ渡った青空が正面に広がっている。
気分もいいし、どっかフラリと旅にでも行きたい気分だ。
「ねぇ、トミー、本当に嬉しかったよ。ありがとう」
バックミラーに写る彼女は優しく微笑んでいた。
「なぁ、オマエ、本当に後悔はないのか?俺なんかといるより、いい生活できたかもよ?」
俺の照れ隠しなんてこの程度の言葉しか浮かばない。
「なによ、アンタ言ったじゃない。『オマエの居場所はこの俺の隣だ』って。信じちゃいけなかったの?」
「信じるも、信じないも、そりゃ、ニーナ、オマエ次第だな」
「まぁ~た、そんなこと言って、肝心なトコはぐらかすんだからっ!」