Mr.ハードボイルド
彼女の喜び
俺の名はトミー。
しがない、なんでも屋さ。
店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。
それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。
おっと、俺の相棒ニーナのご出社だ。
「おはよう、トミー」
甘い香水の香りを漂わせながら彼女は現れた。
「おはよう、ニーナ。相変わらずキレイだな、オマエ」
俺の言葉に、彼女は柔らかく微笑んで俺を見つめ返した。
ちょうど1ヶ月程前のことかな。
彼女は、おばあさんの入院で実家に帰る機会があった。
ニーナの実家ってやつは、じいさんの代から群馬県議を務めるなかなかの名家だった。
その彼女の帰省時に、ニーナは継父に半ば強引に見合いをさせられたりして、なんやかんやと一悶着あったんだ。
もともと、継父とは折り合いが悪く、彼女は高校卒業と同時に家を飛び出した過去があった。
そして、上京してから食っていくために夜の世界に飛び込んでいった。
それを知った継父は激怒してニーナを勘当したんだそうだ。
今の、このご時世に勘当ってのもどうかと思うがね。
まぁ、そんな過去がある状況の中、彼女の帰省にあわせ、その子供のいない継父は、自分の後継者と考えていた七三野郎とニーナを無理矢理お見合いさせたんだ。
まぁ、なんやかんやあって、俺はいてもたってもいられずに、単身群馬に乗り込んで、ニーナを奪い返してきた。
まぁ、それ以来、すっかり、その、なんつうか、俺とニーナはよろしくやってるわけだ。