Mr.ハードボイルド
ハシゴをおさえてくれていたのは祐希ちゃんだったんだけど、まさか、俺とニーナのことで恨まれていたとは思わねぇけど、いや、絶対に偶然なんだろうけどさ、『心も体も』すっかり乙女な祐希ちゃんは、天井の照明から落ちてきやがった、ゴキブリの野郎に驚いちゃって。
気がついたら、俺は床の上にぶっ倒れてたんだ。
しかも、左足が絶望を通り越すくらい痛くてさ。
はい、救急車で運ばれました。
俺の左足、スネの部分でポッキリ折れていやがったよ。
医者が言うには、手術が必要だとさ。
んで、明日、手術を行うと。
なんでも、骨の中に1本のチタン製の棒を突っ込んで骨をつなぐとかなんとか。
ニーナが血相を変えて病棟に飛び込んできた。
俺のベッド脇には済まなそうな顔の祐希ちゃんとローズママが座っていた。
「トミー、大丈夫なの?」
ニーナは半分泣き顔だ。
「心配はいらねぇけど、しばらくは仕事できねぇや。それに、悪かったな。今夜の外食は無理だ。店にキャンセルいれといてくれ」
「ばか、そんなことどうでもいいから」
ニーナは完全に泣き顔になっていた。
「おいおい、オマエが泣くなって。ホントは俺が痛くて泣きたいぐらいなんだからよ」