Mr.ハードボイルド
「いや、奥さんじゃないですよ。友達です。そもそも、俺、独身ですから」
俺の言葉に祐希ちゃんは、ちょっぴり膨れて、
「えぇ~、富井さん、その言葉すごくショック~」
と笑って言った。
「まぁ、しょうがないか。それより、富井さん、手術は?」
「あぁ、そこの若き名医木下先生が完璧にやってくれたよ。ですよね?先生」
木下先生は若干照れ笑いをしながら頷いた。
「明後日くらいから部分荷重を開始してリハビリを始めましょう」
「木下先生、ありがとうございました。私のせいで、富井さん怪我しちゃったから、本当ありがとうございます」
祐希ちゃんの、すがるような上目使いで見つめられた木下先生は、端から見てわかるくらい赤くなっていた。
おいおい、先生、知らないと思うが、祐希ちゃんは男だぜ。
そんな、彼を見て鹿島さんは、ちょっぴり怒ったような顔を見せた。
なるほどね。
そういうことですか。
そんなこんなしてるところに、今度はニーナが姿を見せた。
「どう、トミー、おとなしく手術してもらった?」
そう、俺に一言言ってから、彼女は木下先生と鹿島さんに向かって頭を下げてお礼を言った。
また、木下先生赤くなってらぁ。
あらあら、鹿島さん、あとで先生をイジメないでくれよ。
木下先生は病室を出て行く時、俺にちっちゃく耳打ちした。
「富井さん、美人のお友達多いですね。今度、紹介してください」
おいおい先生、鹿島さんに怒られても知らねぇぞ。