Mr.ハードボイルド
まぁ、なんとかどうにか、術後の経過も順調に進み、俺の折れた足はほとんど問題なく機能するようになった。
退院の日程も決まった。
俺の入院中はニーナと祐希ちゃんがほぼ毎日来てくれた。
たまに、ローズママが来てくれもしたが、女装したマッチョなオッサンはみんなの注目を集めすぎた。
おかげで、俺まで変な目で見られちまったじゃねぇか!
「ねぇ、鹿島さん」
検温に来た彼女に、俺は声をかけた。
「なんですか?富井さん」
「いやぁ、こんなこと言うと怒られるかもしれないけど、鹿島さんさぁ、木下先生のこと好きなんでしょ?」
俺のこの言葉に、彼女はまるで小学生のようにわかりやすい反応を示した。
しかし、口ではこう言った。
「富井さん、そういう冗談はやめて下さい」
軽く睨むような表情を浮かべる鹿島さんにおれは謝った。
「ハハハ、ごめん、ごめん」
でもよ、こいつは、やっぱりビンゴだなぁ。
よし、世話になった義理もあるし、ここは一肌脱いでやるか。
「あのさぁ、鹿島さん、明日、俺退院するけど、明日の夜時間ある?」
「富井さん、ふざけてないでしっかり熱を計って下さい」
「いや、時間あったらさぁ、木下先生とご一緒に、世話になったお礼にちょっと、催しでも開かせてもらおうかなぁってね」
「富井さん、うちは病院ですよ。そういったお気遣いは無用です」
ほぅ、結構堅いなぁ。
「でも、さっき木下先生誘ったら、ふたつ返事で快諾してくれましたよ」
そうなんだ、木下先生はあっさりと俺の快気祝い参加を快諾してくれた。
まぁ、お目当ては祐希ちゃんなんだろうけどさ。
まぁ、鹿島さんにとっても、いいチャンスだと思うんだけどね。
「富井さん、お熱はないですね。じゃあ、明日の退院大丈夫そうですね。先ほどのお誘いの件よろしくお願いします」
あらら、堅いこと言ってた割に、案外簡単に手のひら返すとはねぇ。
ひたむきな恋ですなぁ。