Mr.ハードボイルド


俺は退院する際、木下先生と鹿島看護師に、今夜の会の場所と時間を伝えた。
場所は『BAR マダムローズ』。
夜の7時からやってるから、都合ついたら来てくれよ。

さてさて、どうなることやら。
まぁ、俺とすりゃあ、この機会が、鹿島さんの気持ちを先生に伝えるキッカケ作りになってくれりゃあ、それでいいんだがね。


「トミーちゃん、退院おめでとう!」

ダミ声のローズママの言葉を皮切りに、俺の快気祝いは始まった。
俺の右隣にはニーナ、左隣には祐希ちゃん、その祐希ちゃんの左隣に木下先生、木下先生の左隣に鹿島さんが座って、各々酒を飲んでいた。
あらら、鹿島さんたら、つまんなそうにしてらぁな、せっかくの機会なのになぁ。
もっと積極的にいかなきゃ!

その鹿島さんのすぐ隣で木下先生は祐希ちゃんと楽しそうに談笑して盛り上がってやがるし。

鹿島さんよぅ、内に秘めるだけの恋じゃあ、いつまで経っても報われないぜ、もっと積極的にならなぁ。
って、オイっ!か、鹿島さん?いくらなんでも、酒のペース早すぎないかぁ?

鹿島女史はグイグイとバーボンのグラスを空け、あれよあれよと言う間にボトルを空にしちまいやがったよ。
そして、カラオケ用のちっちゃなステージに向かいツカツカと歩きだした。

な、なにやってんだぁ?

そして、マイクを握りしめて言った。


「木下恵一!私の話を聞けぇ~!」

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