Mr.ハードボイルド
鹿島看護師は、マイクパフォーマンスのあと完全に酔いつぶれてしまって、別室に木下先生と俺で担いで連れて行った。
「先生よぅ、しかし驚いたなぁ。で、どう答えてやるんだ?」
「いやぁ、突然のことで、どう対応したらいいのやら」
木下先生は曖昧な笑みを浮かべて続けた。
「まぁ、普段から堅そうで生真面目な鹿島さんがあんなこと言ってくれるなんて、ちょっと嬉しいかな」
「きっと不慣れだったんだろうな、色恋沙汰は。でも、看護師としちゃあ、優秀だぜ。これは実際に看護してもらった俺が言うのだから信じてくれ」
俺の言葉に彼は笑いながら言った。
「富井さん、アナタは彼女と僕をくっつけたいと?」
木下先生の言葉に俺は答えた。
「いやなに、ひたむきな彼女を応援してやりたかっただけさ」
「アナタみたいに女性の心が見抜ける人が羨ましいですよ、富井さん。だからアナタの周りには新名さんや真中さんみたいな魅力的な人が集まるんですね」
俺は彼の言葉に片目を閉じて答えてやった。
「先生よぅ、鹿島さんだって充分すぎるほど魅力的な女性だぜ」
ホント、仕事にも、恋にも一途で一生懸命で、ただちょっと、不器用にしか生きていくことができないのかもしれないが、でも、イイ女だと思うぜ、なっ、先生。