Mr.ハードボイルド
「ほう、そうかい。それでどんな仕事してんだい?どうせ社長のアンタが豆腐売りしてるぐらいだから、たかがしれた会社なんだろうけどさ、従業員は何人いるんだい?」
オイオイ、ひどい言われようじゃねぇか!
俺は『オフィスHBサービス 代表 富井俊介』と書かれた名刺を彼女に渡した。
「まぁ、なんでも屋ってとこだな。頼まれた依頼は法に触れないようなことならなんでもする。犬散歩でも、豆腐の販売でも、店の用心棒でもなんでもだ」
「ふ~ん、それで社長自ら豆腐売りしてるんだ。暇な会社みたいだね」
ったく、なんだってんだよ、エラい言われようじゃねぇか。
「じゃあ、かわいそうだから、私が仕事依頼してやるよ」
そう言って、菅原のバアさんは総入れ歯の歯を剥き出しにして、ニィっと笑った。
「来週の月曜日、朝9時に車で迎えにきておくれ」
「はぁ?何をしようってんだい、菅原さん」
「私の愛しの旦那様の月命日にお墓参りに行くんだよ」
なるほどね、一人暮らしのご老人にとっちゃ、墓参りに行くのも楽じゃねぇだろうな。
「あぁ、わかった。その依頼受けるよ。そのかわり、しっかり報酬はいただくからな」
「いくらだい?」
「そりゃあ、交通費や必要経費は実費でもらうけど、あとは菅原さんが決めりゃいい。満足いかなけりゃ、0円でも構わないぜ」
実際の話0円だったらニーナになに言われっかわからんがなぁ。
ただ、一人暮らしのご老人から金をむしり取るほど、俺は落ちぶれちゃいねぇぜ。