Mr.ハードボイルド
彼女が主役
俺の名はトミー。
しがない、なんでも屋さ。
店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。
それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。
おっと、俺の相棒ニーナのご出社だ。
「おはよう、トミー」
彼女は甘い香水の香りを漂わせながら現れた。
「おはよう、ニーナ、今日も一段とイイ女だな」
俺の言葉にニーナは笑みを浮かべて答えた。
「もう、その言葉、何回聞いたかしらね。たまには別の褒め言葉ないのかしら?」
「あぁ?俺がキレイだと思ってるから言ってるだけだぜ。別に褒めようと思って言ってるわけじゃねぇから。イイじゃねぇか、イイ女にイイ女だってホントの事を言ってるだけだから」
彼女は満更でもなさそうな笑みを軽く浮かべ、コートを脱いだ。
「ねぇ、トミー、明日はクリスマスだけど、ちょっと贅沢な食事でも行かない?」
「あっ?クリスマスかぁ、マッタク気にしてなかったよ。じゃあ、この前の焼き鳥屋でフォアグラ串に赤ワインでもいっとくか?」
彼女はちょっと考えたような顔をして、
「う~ん、どうせなら違うところがいいかなぁ。私にお店考えさせてもらえるかな?」
と、言った。
おいおい、ニーナ、雑誌とかで紹介されてる店はイヤだぜ。
俺、人混みに入ると頭痛くなるからさ。