Mr.ハードボイルド
彼女が主役



俺の名はトミー。
しがない、なんでも屋さ。
店の用心棒から園児の送迎、はたまた要人の護衛まで、依頼されたものはなんでもこなす、なんでも屋だ。

それにしても、男の朝飯は、バターをたっぷり塗ったトーストと、粗挽きにしたモカの豆から入れたコーヒー、それに、かたゆでたまご(ハードボイルド)にかぎるぜ。
間違っても、俺は、白米にみそ汁、それに、納豆などという朝飯は食わない。

おっと、俺の相棒ニーナのご出社だ。

「おはよう、トミー」

彼女は甘い香水の香りを漂わせながら現れた。

「おはよう、ニーナ、今日も一段とイイ女だな」

俺の言葉にニーナは笑みを浮かべて答えた。

「もう、その言葉、何回聞いたかしらね。たまには別の褒め言葉ないのかしら?」

「あぁ?俺がキレイだと思ってるから言ってるだけだぜ。別に褒めようと思って言ってるわけじゃねぇから。イイじゃねぇか、イイ女にイイ女だってホントの事を言ってるだけだから」

彼女は満更でもなさそうな笑みを軽く浮かべ、コートを脱いだ。

「ねぇ、トミー、明日はクリスマスだけど、ちょっと贅沢な食事でも行かない?」

「あっ?クリスマスかぁ、マッタク気にしてなかったよ。じゃあ、この前の焼き鳥屋でフォアグラ串に赤ワインでもいっとくか?」

彼女はちょっと考えたような顔をして、

「う~ん、どうせなら違うところがいいかなぁ。私にお店考えさせてもらえるかな?」

と、言った。

おいおい、ニーナ、雑誌とかで紹介されてる店はイヤだぜ。
俺、人混みに入ると頭痛くなるからさ。

< 69 / 93 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop