Mr.ハードボイルド
「あら、山内さん、どうされました?」
ニーナが柔和な笑顔で対応した。
「いや、ちょっとですね、お頼みしたいことがありまして、それで」
「山内さん、ご依頼ですか。どんな内容でしょうか?」
俺はローズママを押しのけて山内のご主人に近づいた。
「いや、実は今回は富井さんではなく、新名さんに頼みたいことがありまして」
「えっ?私にですか?」
彼女はキョトンとした顔で山内のご主人を見た。
「えぇ、新名さんにぜひお願いしたくて、あの、ちょっと申し上げにくいことなのですが、明日ですね、商店街のクリスマスイベントを企画しておりまして、そこでサンタの格好をしていただいて、イベントを盛り上げていただきたいのですが」
「あの、山内さん、サンタなら商店街のダンナ方の方が似合うんじゃないっすか?」
俺の問いに彼は手に持っていた紙袋を探りながら答えた。
「こういった格好は若い女性しか出来ないと思いまして」
彼が手に持っていたのは、赤いサンタの服を模したワンピースのミニだった。
「本当はうちの娘にやらせようとしたのですが、クリスマスだから彼と出かける、なんて言いやがりまして、さすがにうちの古女房にこんな格好させられるわけもなく」
困り顔の山内のご主人を見て、ニーナは言った。
「わかりました、山内さん、その依頼受けます」
おいおい、ニーナ、サンタのコスプレだぜ?
まぁ、俺はキライじゃねぇけど、できれば、俺とふたりの時にしてほしいものだが。
早速、ニーナはサンタのミニスカートに着替えてきた。
ほう、イイねぇ、実にイイ。
そんな彼女の姿を見て、『乙女心』に火が点いたふたりがいた。
「私にも手伝わせてください!」
祐希ちゃんとローズママが同じ事を同時に言った。