Mr.ハードボイルド
ニーナに祐希ちゃん、それにローズママ、そして商店街のご主人たちの努力もあって、この『笹の川商店街クリスマスセールイベント』は成功を収めた。
大型店舗の進出で正直、商店街の景気は下降線を辿ってきているようだったが、この活気があれば、そして大型店舗には無い、この地域密着型の人の温もりを感じる商売が出来ていれば、きっと大丈夫だろう。
俺はそう信じるぜ。
さてと、この依頼も片が付いたことだし、『BAR マダムローズ』のクリスマスパーティーに顔を出すとしますか。
ローズママが商店街のイベントに参加したこともあって、急遽、商店街のご主人たちもマダムローズに集合することとなった。
普段は怪しすぎるローズママさんのせいで、ご主人たちがこの店に足を踏み入れることはほとんどなかったようだが、これをキッカケに何人かは常連様になるにちがいない。
よかったな、ローズママさん、怪人・おかまトナカイやってよ!
店内のステージの上では今日の主役とばかりにニーナと祐希ちゃんが一緒にカラオケをやってやがる。
なんか、普段見られないニーナのハシャいだ姿を見ることが出来て、酒が美味くすすむぜ。
たまにゃあ、大勢の人間とこうやってバカやりながら騒ぐのも悪くねぇな。
帰り道、俺はニーナと星空を見上げていた。
さっき、北の空に大きな流れ星が見えたんだ。
長い尾を引きながら最後は燃え尽きるように消えていった。
「ねぇ、トミー、さっきの流れ星にお願いできた?」
彼女は俺の腕に手を絡めて寄り添ってきた。
「いや、突然だったからできなかった。オマエは?」
「私もできなかったわ。だから次こそはって構えてるんだけど、なかなか見れないわね」
「きっと、構えてるからだよ。なんも考えないでボゥっと空を見上げてりゃ、また見ること出来るさ」
俺はそう言って、ニーナともう一度一緒に真上の空を見上げた。
その刹那、1本の光の筋が俺たちの上を通過した。
「なっ、俺の言った通りだろ?」
俺の言葉にニーナは嬉しそうな顔で答えた。
「今度はキチンとお願いできたわ」
「で、なにをお願いしたんだ?」
彼女はニッコリと微笑んで答えた。
「ひ・み・つ」