Mr.ハードボイルド



とりあえず、指輪でも買おうと思い俺は通りをフラフラと歩いていた。
すると、前から愛犬の武蔵をだっこした祐希ちゃんが現れた。

「あっ!富井さん。ちょうどよかった、これ、チョコレート」

そう言って、祐希ちゃんは心からの笑顔で俺に包みを手渡した。

「あぁ、祐希ちゃん、ありがとう」

そうだ、この際、祐希ちゃんに色々相談してみるか。

「なぁ、祐希ちゃん、女の子ってさ、誕生石の指輪とダイヤモンドの指輪、もらうならどっちが嬉しいかな?」

祐希ちゃんは俺の問いに不思議そうな顔をしたが、答えてくれた。

「結婚指輪ならダイヤでしょうけど、ねぇねぇ、富井さん、どうしたの?私に指輪くれるの?私の誕生石はエメラルドだからね」

彼女は俺の様子から、なんとなくニーナとのことを察したのだろう、努めて明るい様子で話した。

「そうか、ちなみに2月の誕生石って?」

多分、祐希ちゃんにとっては聞きたくなかった言葉だったと思う。

「2月はね、アメジストよ……」

「そうか、ありがとう、祐希ちゃん。」

「今日って、確か、ニーナさんの誕生日だったわよね?」

彼女は涙を必死に堪えるような表情で、無理やりの笑顔をみせた。

「あぁ、そうだ。ニーナに贈るプレゼントのことだ。俺、アイツと結婚しようと思ってる」

祐希ちゃんの瞳から一筋の涙がこぼれ落ちた。

「お、おめでとう、富井さん」

そして、彼女は吹っ切れたような笑顔を見せた。

「富井さん、プレゼントとかそういうのわかってなさそうだから、今日は1日、私がつきっきりでアドバイスしてあげるわ。そのぐらいいいでしょ?私の思い出のためにも、ね?」

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