Mr.ハードボイルド
俺と真理とは、以前会社勤めしていた頃の同僚だった。
俺たちは大卒新卒の同期入社だった。
部署も同じ営業部でそれこそ四六時中顔をあわせていた。
当時の真理といえば、バリバリ仕事をこなし、サボってばかりの俺とは対称的評価を上司からもらっていた。
まぁ、いわゆる同期の仲ってやつなんだが、どういうわけか1度だけ男女の仲になったこともある。
それは俺と真理が揃って会社を辞める時だった。
俺は当時、とある理由で大金が転がり込んできて会社で働く気が失せてしまい、自分で好きなことを始めようと決意していた。
真理は真理で、仕事は順調にしていたが、プライベートで妻子ある上司と色々あって会社にいられなくなっていた。
そんな訳で、同じ日に入社した俺たちは、退職する日も一緒だった。
誰にも見送られることもなく、俺たちはふたりだけで送別会というか、門出の祝いというかで飲みに行きそんな関係になって翌朝を迎えていたわけである。
恋愛というのではなかったと思う。
当時の俺は心底惚れていた女がいて、まぁそれは今の嫁であるわけだが、真理に特別な感情を抱いていなかったと思う。
彼女にしても同じだろう。
いざこざあった上司のことに未練がたんまりとあると酒の席で言っていたしな。