Mr.ハードボイルド
だけどなぜか、翌朝俺たちは同じベッドで寝ていた。
もちろん、その最中の記憶だってある。
酒の上での失敗とも思えなかったわけだが。
その時はその流れが自然に思えていた。
そしてその朝から7年、その間一切連絡を取ることもなく、今夜再び真理に会ったわけだ。
「なぁ、真理、おまえ会社辞めた後、なにやってたんだ?」
バーボンのロックを口にしながら俺は彼女に尋ねた。
真理は笑顔を作り、俺を見つめた。
「富井君、君こそなにやってるの?あんまり堅気じゃなさそうな格好してるけど」
俺は彼女の問いに黙ったまま名刺を差し出した。
真理はそれをまじまじと見つめていた。
「オフィスHBサービス 代表って富井君、社長さんなの?」
俺はコクりと頷いた。
「まぁ、代表って言っても嫁さんが受付でバイトの子がひとりいるだけだがな。もっぱら俺が実働してるんでな」
今の言葉に真理は片眉を上げた。
「あれっ?今『嫁さん』て言った?富井君、結婚してるの?」
俺は黙ったまま頷いた。
「もしかして、会社辞める時に熱上げてたキャバクラの子?」
「真理、よくそんなこと覚えてるな。あぁ、その通りだ。あん時に夢中だった女が今の嫁さんだ」