善悪の境界線
着席した冬期が、またも声をあげた。
「どうした、佐倉?」
富樫先生が十九番にいこうとした矢先声をあげた冬期に、首を傾げる。
「もう一つみんなに言いたいことがあったんですー」
そう言って、一息おいてから続けた。
「うちのかわいー妹を泣かせたり、たぶらかしたりしたら、女だろーが男だろーがただじゃおかないからね。」
…………………。
顔は笑っていたが、さっきの元気な笑顔とは違うものだった。そして、私の時以上に凍りついた沈黙が訪れた。
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