善悪の境界線
ドアを開けて今度こそ帰ろうとしたら、またしても同じ顔が目の前に現れた。
「……………あら?神崎さん…よね?冬期に声かけられなかったの?」
………夏期。え…なに、グルだったわけ?怖っ…
「……………はい、話しかけられましたが。それがなにか?」
「………え、じゃあ、オッケーっていうことかしら?」
……………………ん?な、なにが?
「ち、違うのっ夏期!!」
後ろからバビュンと冬期が飛んできた。そして、夏期にひそひそ話をし始める。………いったい、なんなのよ。帰りたいのに……。
「……………ああ、そういうことね……。……ごめんなさい、神崎さん。冬期、言葉足らずなものだから……。少し、お話がしたいだけなのよ。付き合っていただけないかしら?」
…………急に、私になんの話があるかは全く分からないけれど。……私、夏期、好きなタイプかもしれない。
「…………いいわ。少しだけならね。」
冬期と違って、話をすることを許可することも、敬語を止めることも、容易かった。
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