善悪の境界線
「………な」
ドラゴンが声を出す前に冬期が声を出す。
「…な、なんだそんなこと!?」
「だ、だから言ったでしょう、深刻なことじゃないって!……でも」
私は冬期に言って、それからドラゴンに向かって囁いた。
「…………何をするにも、ましてや契約なんて大事なことをする時は、相手に敬意を払わなきゃいけないでしょ。名前も知らない人同士が敬意なんて…できないじゃない……?」
ドラゴンは私の言葉をきいて、すごくビックリしていた。
「………ふっ、そんなことを言う人間は初めてだな。はっは、名前なんぞ容易い。我の名はクリスティア。以後よろしくな。」
…………クリスティア、ね。
「……ありがとう。じゃあ、クリスティア。私はあなたと契約するわ。」
私はこの日初めて、微笑んだ。
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