摩訶不思議目録2
「あっ出口だ!!」
僕はいち早く出たかったので急いで出口へ向かった。
表に出ると、森に囲まれた村があった。薄ら青い空間が、水中を思わせる。
...と、目の前に赤い魚が揺らぐ。
「し、師匠!!!魚が浮いてるぞ!!!」
後からゆっくりと歩いてきた師匠は言う。
「いえ、私達が沈んでいるんです。」
のんびりと答える師匠は、この異変に驚かない。
「い、息...!!!!が出来る。体が...!!!浮き上がらない。なにかが...!!!おこらない。」
僕は脳で処理することが多すぎて戸惑った。
「そう驚くことはありません。」
師匠は狂ったように慌てる僕を笑った。
普通慌てるだろう。
「それより、こんなおかしな空間に住む妖怪は恐ろしいと聞きます。このナイフは貴方に預けます。何かあったらやむ終えません。」
僕はいいも悪いもいえないまま、小刀をコートの内側に入れた。
やむ終えないということは、三箇条もやむおえないのだろうか。
だが、誰かに助けをもとめられるのはこれが初めてだ。僕は人を困らせるばかりだ。手助けになるなら何だってできる。
助けになるなら。
「がんばる!」
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