摩訶不思議目録2
古びた駅舎
「それにしても古臭いね。」
僕が言うとけゐは苦笑う。
「まあ、新しい駅舎ではないので、無理ありません。 こちらです、どうぞ。」
けゐは、裏口へと僕たちを案内した。

裏口から入ると、オフィスのような空間がひろがる。給湯室から溢れ出すお茶っ葉の香りが先程まで休憩時間だったのだと予想させる。
「ちょっと、お客さん。なんか、妖怪がうんたらいっているんですが。」
けゐがこちらからは死角の給湯室を覗き込んでなにかぶつぶつつぶやいている。向こうに人がいるのだろうか。
と、思うと制帽を被った下半身のない脱色した髪の...人間?が現れた。
「どうかなさいましたか?」
下半身のない人間?は輝かしいスマイルで師匠と僕を椅子に座らせた。
「すみません。たいした事もできなくて。で、用件とはなんでしょうか。」
下半身のない人間?は輝かしいスマイルをたもったまま聞く。
「妖怪がこちらのどこかから人間界に漏れでているようです。支障が及ぶといけないのでどうにかできないでしょうか。」
師匠は静かに尋ねた。
「うーん。まあ妖怪がいてもいいんじゃないですかね!」
下半身のない(ないといっても透けているように見えるだけであり、実際体は宙に浮いている)人間?は笑った。
「良くないからきてるんだよ!どんどん来ちゃって、人口とかもうそういうのがいっぱいいっぱいなんだ!!そのうちがしゃどくろ等の人間の怨みの塊がでてもいけないし...。」
僕は立ち上がって叫んだ。
「いいじゃん。人間の怨みを人間自身が打ち消す。それが一番正しいと俺はおもいますけどね。」
たしかにコイツの言うことは間違っていない。だが、人間にとって悪い妖怪が出てきてしまうとどうしようもないのだ。
だから、なんどかこのようなやり取りが続くのも無理はなかった。が、下半身のない人間らしき奴によってそれは防がれる。
「まあ、時空が壊れはじめてるってのは間違いじゃないし、その治し方もだいたいわかる。」
名前のわからない人間らしきコイツは言う。
「でも。」
名前のわからないコイツはつづけていった。
「壊れている空間を治すために必要なエネルギーが俺にはない。」
「エネルギーはどこからもってくればいいの?」
僕が聞くと首を振って人間らしき奴は答えた。
「自分の生命力がエネルギーになっている。でも見てのとおり体が半分ないから、当然パワーも半分になってしまう。
生命力の強い人間の魂を3つ喰えば生命力が回復するらしいけど、本当かどうかもわからないし、何より人殺しはごめんだ。」
「不可能...か...。」
師匠は頭を抱えた。
「ねえ、上半身さん。」
僕が質問しようとすると、人間らしき人は遮って答えた。
「俺は上半身さんじゃない。デルニエール・トレインだ。」
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