猫足のバスタブ、愛の誓い




西の部屋のクローゼットの中

白い布に包まれた1枚のキャンバス


それをそっと取り出すとその場に座り込んだ

布をとると顕になるその笑顔







愛しいその人が時をとめて微笑んでいる



目から溢れた雫がキャンバスに落ちては染みをつくる





隣の部屋からはさっき蛇口を捻ってきた水道からバスタブにお湯が溜まる音が響いている


夕食の後、いつか美樹さんが話してくれた

金色に光るあの猫足のバスタブはいまの部屋に越してくる時、幼い日のあの子がこれがいいと言って譲らなかったそうだ

本人は覚えていなえけど

と洗い物に夢中になっているその子のほうに視線を投げかけ愛しそうに微笑んでいた




さっき抱きしめたあの子の温もりが腕の中に蘇る

まだあんなにも小さいあの子をのこして

どうしてみんないなくなってしまう

美樹さんもあの子を産んだあの女も


まだ誰かが守ってやらなきゃいけないのに

誰かが側で支えてやらなきゃいけないのに




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