猫足のバスタブ、愛の誓い



美樹さんお手製紅茶のパウンドケーキを冷めないうちに隣の部屋に持って行く


主人の外出時以外は寝る時でさえも鍵のかかっていない玄関のドアを無遠慮に開け、突き当たりに見えるリビングに入ったすぐ左の部屋

西日の差すその部屋だけが違う世界を創っている

それが不自然なほどの白塗りの壁のせいなのか
それとも壁際に幾重にも重ねられた大小さまざまな彩られたキャンバスのせいなのか
わからない

水性絵の具の柔らかな色味が日に照らされて輝いている


手に持っていたそれをリビングのテーブルに置き、西の部屋にいる彼に声をかける


曖昧な返事と立ち上がる気配がする



勝手知ったるように、というか勝手知っているキッチンの一角にある業務用の大きな冷蔵庫

開けてみればその中身はいつでも殆ど何も無い



薄い壁を挟んだ隣の部屋からは美樹さんが流しを片付ける音が聞こえてくる


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