猫足のバスタブ、愛の誓い





まだ酒の残っていた運転手が歩道に車ごと突っ込んだ


一瞬で喪った


病院から美樹さんの手帳のいちばん最後のページ、緊急連絡先の欄にあった番号にかけると美樹さんの姉、つまり私を産んだ女の声がした
受話器を耳に当てたまま黙り込んでいると電話口の向こう側で女は何かを察知したかのように何処に居るのか慌ただしく聞き出しその日の夜にはやって来た


子供を捨てておいて男と蒸発するような女でも高校生の私なんかよりもこんな時はしっかりとするものらしく、あっという間に葬儀屋なんかを手配して通夜と葬儀のことなんかもあれよあれよと決まっていった

結婚もしておらず両親はすでに他界し兄弟も他にいなかった美樹さんにとってその女が唯一の肉親であったためその人が喪主を務めることとなった

不服だったが仕方なかった

まだ高校生の私には何も出来なかった

無力な子どもだった
まだほんの子どもだった




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